こんにちは!編集長です。
この記事では、特別区採用試験の各区の倍率と、それを踏まえて志望3区から内定を獲得するための選び方を解説します。
倍率について、正しく理解している受験生は多くありません。
ですが、倍率を知らないと、志望する区から内定を得ることが難しくなります。
倍率の知識や、公表されていない各区の倍率を解説しているので、じっくり読んでくださいね。
【特別区】全体の倍率
【特別区】採用試験の仕組み
まず、各区の倍率を見る前に、知っておくべきことがあります。
それは、特別区の採用試験の仕組みです。
ここを押さえておかないと、倍率を正しく理解することができません。
選考の流れはこのとおりです。
人事委員会 管轄 |
1次試験 (筆記試験) |
教養択一試験、専門択一試験、論文試験を実施。 全ての試験の合計得点により1次試験合格者が決定される。 |
---|---|---|
2次試験 (面接試験) |
個別面接1回を実施 | |
最終合格 | 1次試験と2次試験の総合成績で決定される。 最終合格者は、得点の高い順に採用候補者名簿に記載される。 |
|
区役所 管轄 |
区に名簿提示 区から連絡 |
人事委員会が各区に名簿を提示し、各区から連絡が来る。 席次が高ければ第1希望区から連絡が来るが、席次次第では第2希望区以下やその他の区から連絡が来る。 |
区面接 | 原則として個別面接が1回実施されるが、区によっては集団討論を課す場合もある。 面接日程は区ごとに異なり、面接カードも区ごとに書く必要がある。 内定が出されなければ、他の区から連絡が来るのを待つことになる。 |
|
内定・採用 |
最終合格者は、採用候補者名簿に得点の高い順に記載されます。
願書に記載した3つの希望区をもとに、人事委員会が各区に対して得点の高い順に提示します。
採用候補者は各区からの連絡を待ちます。
例年、最終合格の順位が3桁以内の人は、第1希望区から連絡が来ることが多いです。
4桁以上の人は第2希望区以下やその他の区から連絡が来ることもあります。
その後、各区ごとに面接が行われ、各区ごとに内定が出されます。
内定が出されない場合は、再び提示が行われ、他の区から連絡が来るのを待つことになります。
状況によっては提示されず、どこの区からも採用されない場合もあります。
大半の人は、1回目の区面接で内定が出されることが多いです。
一方、翌年まで何度も区面接を受けて、ようやく内定が出される人もいます。
【特別区】採用試験の倍率
人事委員会が管轄する採用試験における、過去10年間の倍率はこのとおりです。
ここでの倍率は、各区の倍率ではなく、あくまで特別区全体の倍率です。
年度 | 1次試験 | 2次試験 | 総倍率 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 合格者数 | 倍率 | 受験者数 | 最終合格者数 | 倍率 | ||
2023(R5) | 7,668 | 5,955 | 1.3 | 4,595 | 3,013 | 1.5 | 2.0 |
2022(R4) | 8,417 | 4,246 | 2.0 | 3,312 | 2,308 | 1.4 | 2.8 |
2021(R3) | 9,019 | 4,098 | 2.2 | 3,006 | 1,881 | 1.6 | 3.5 |
2020(R2) | 8,121 | 4,791 | 1.7 | 2,197 | 1,741 | 1.3 | 2.2 |
2019(R1) | 11,501 | 4,244 | 2.7 | 3,219 | 2,032 | 1.6 | 4.3 |
2018(H30) | 12,718 | 4,505 | 2.8 | 3,812 | 2,371 | 1.6 | 4.5 |
2017(H29) | 12,683 | 4,219 | 3.0 | 3,599 | 2,176 | 1.7 | 5.1 |
2016(H28) | 11,795 | 3,433 | 3.4 | 2,909 | 1,781 | 1.6 | 5.4 |
2015(H27) | 9,712 | 3,263 | 3.0 | 2,972 | 1,739 | 1.7 | 5.1 |
2014(H26) | 12,906 | 3,031 | 4.3 | 2,348 | 1,668 | 1.4 | 6.0 |
総倍率は、1次試験の倍率×2次試験の倍率を表しています。
近年、倍率は低下傾向にあります。
総倍率は2~3程度です(受験生2人~3人のうち、1人が最終合格)。
他の公務員試験に比べれば、かなり低い倍率といえます。
ここで最終合格をした人が、次の区面接に進みます。
【特別区】各区の倍率
【特別区】区面接の3つの倍率
各区の倍率とは、区面接における倍率を指します。
人事委員会が管轄する採用試験における倍率は、特別区全体で実施されるため、各区の倍率というものは存在しません。
そして、各区の倍率は大きく3つあります。
1つずつ確認していきましょう。
定員 A |
志望者 B |
志望倍率 C=B/A |
提示数 D |
提示倍率 E=D/A |
面接辞退者 F=D*0.25 |
採用数 G=A*1.5 |
実質倍率 H=(D-F)/G |
|
A区 | 10 | ? | ? | 20 | 2 | 5 | 15 | 1 |
B区 | 50 | ? | ? | 100 | 2 | 25 | 75 | 1 |
志願倍率
志願倍率とは、各区の定員に対する志願者の割合です。
志願者は、出願時に選んだ志望3区の人数です。
受験生が気になる各区の倍率は、志願倍率を指すことが多いようです。
実際、志望3区を決める際に、志願倍率は重要な指標になります。
ただし、志願倍率は公表されていないため、知るのは困難です。
当ブログでは志願倍率を推計したので、後ほど紹介します。
提示倍率
提示倍率とは、各区の定員に対する提示数の割合です。
提示数は、人事委員会が各区に最終合格者を成績順に提示する数です。
提示倍率は受験生の間であまり知られていません。
志願倍率と提示倍率を混同している人も多いようです。
そして、提示倍率は各区で例年ほぼ同じ2倍になります。
なぜなら、定員の2倍の最終合格者を、人事委員会が各区に提示する仕組みだからです。
つまり、提示された受験生のみが区面接を受けるわけですから、区面接自体の倍率はどこの区でも2倍になります。
これは、あまり知られていませんが重要な事実です。
実質倍率
実質倍率とは、実際の採用数に対する、区面接の受験者数の割合です。
実際の採用数は、定員より一定程度多くなる傾向があります。
内定辞退を見越して、多めに採用するためです。
また、区面接の受験を辞退する人も一定程度います。
したがって、実際の区面接の受験者数は、提示数から面接辞退者を引いた人数です。
こうした要素を含めると、区面接の実質倍率は1倍を少し超える程度です。
提示倍率は2倍なので、2人に1人しか合格できないと思うかもしれませんが、決してそうではありません。
区面接は、よほどのことが無ければ合格すると言われています。
それでは、志望3区を決める際に重要となる、志願倍率を見ていきましょう。
【特別区】各区の志願倍率
特別区人事委員会では、各区の志願倍率を公表していません。
おそらく、特定の区への志望者の偏りを防止するためと考えられます。
とはいえ、何も手掛かりが無いわけではありません。
もっとも信頼できるのは、予備校で集計しているデータです。
予備校では例年、千人程度の受験生から志望3区を聞き取りしています。
そのデータをもとに、当方で各区の倍率を推計しました。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 平均 | |
千代田区 | 4.1 | 5.0 | 4.4 | 6.1 | 4.9 |
中央区 | 2.2 | 1.8 | 3.0 | 2.2 | 2.3 |
港区 | 3.2 | 1.5 | 2.3 | 5.4 | 3.1 |
新宿区 | 1.9 | 2.2 | 1.9 | 2.3 | 2.1 |
文京区 | 6.2 | 3.7 | 3.3 | 4.4 | 4.4 |
台東区 | 2.4 | 1.3 | 2.7 | 1.7 | 2.0 |
墨田区 | 1.9 | 2.2 | 2.2 | 2.3 | 2.1 |
江東区 | 1.8 | 3.5 | 1.5 | 1.4 | 2.0 |
品川区 | 1.3 | 2.2 | 1.4 | 1.4 | 1.6 |
目黒区 | 1.5 | 1.3 | 1.5 | 3.3 | 1.9 |
大田区 | 0.8 | 1.3 | 1.0 | 1.0 | 1.0 |
世田谷区 | 1.9 | 2.9 | 1.5 | 2.4 | 2.2 |
渋谷区 | 3.0 | 2.0 | 2.6 | 3.5 | 2.8 |
中野区 | 2.8 | 2.2 | 2.3 | 2.5 | 2.5 |
杉並区 | 3.8 | 3.0 | 3.6 | 2.0 | 3.1 |
豊島区 | 4.4 | 6.1 | 3.0 | 2.8 | 4.1 |
北区 | 1.8 | 2.1 | 1.5 | 1.4 | 1.7 |
荒川区 | 1.7 | 1.3 | 3.6 | 3.6 | 2.5 |
板橋区 | 1.4 | 1.1 | 0.9 | 2.1 | 1.4 |
練馬区 | 1.4 | 2.2 | 1.8 | 2.0 | 1.8 |
足立区 | 1.4 | 1.8 | 1.1 | 1.1 | 1.3 |
葛飾区 | 1.5 | 1.6 | 1.3 | 1.4 | 1.5 |
江戸川区 | 1.4 | 1.2 | 3.2 | 4.1 | 2.5 |
上記の志願倍率は、志望3区のうち第1志望の倍率を推計しています。
データは少し古いですが、大まかな傾向は例年同じです。
また、受験生全体ではなく、千人程度の標本から母集団を推計しているため、誤差は存在します。
このデータを基準に、受験案内が公表されたら各区の定員を確認し、志望3区を選ぶことができます。
倍率の特徴から、各区は3つに分類されます。
Aランク(倍率:高い)
倍率が特に高いAランクは、千代田区・港区・文京区・渋谷区・杉並区・豊島区の6つです。
中でも、千代田区・港区・文京区は伝統的に人気区と言われ、倍率が突出しています。
Aランクの倍率は、例年3倍を超えることがほとんどです。
提示倍率が2倍ですから、第1志望区に選んだとしても、提示されるのは容易ではありません。
Aランクの区面接に提示されるためには、上位1割から2割での最終合格が必須です。
ちなみに、2023年度試験において、中野区の定員は前年から半減しました。
おそらく、志願倍率は4倍を超え、Aランク相当であったと考えられます。
Bランク(倍率:普通)
倍率が普通程度のBランクは、AランクやCランクに当てはまらない多くの区が該当します。
Bランクの倍率は、例年2倍前後です。
最終合格順位が上位半分に入っていれば、おおむね区面接に提示される傾向があります。
Cランク(倍率:低い)
倍率が低いCランクは、大田区・北区・荒川区・足立区・葛飾区の5つです。
伝統的に不人気区と呼ばれ、例年の志願倍率は1倍を超える程度で推移しています。
最終合格順位が下位半分くらいの場合、たとえ志望していなくてもCランクの区面接に提示されることが多くなります。
ただし、荒川区は近年の志願倍率が高めです。
Cランクでも、定員が増減したときには志願倍率が変動するので、注意しましょう。
【特別区】志望3区の選び方
ここからは、受験生が悩む志望3区の選び方をお伝えします。
「倍率の高い区は避けた方がいい?」
「どこの区を何番目に書いたらいいの?」
「そもそも自分の合格順位が分かる前に、志望区を選ぶのはムリじゃない?」
考えるほど迷宮入りですよね。
そこで、これまで当ブログが調査した結果をもとに、独断と偏見で「第3志望以内で必ず内定を目指す」ための志望3区の選び方を解説します!
【特別区】第1志望区
王道ですが、第1志望は悔いなくチャレンジするべきです。
絶対に行きたい区があれば、迷わず書くことをおすすめします。
特に、以下のAランクに当てはまる区は、確実に第1志望に書いておきましょう。
Aランクの区は、第2志望以降に書いても区面接に呼ばれない可能性が高いです。
【特別区】第2志望区
第1志望にAランクなどの一番行きたい区を書いたら、第2志望にはBランクの区を書くのがセオリーです。
1回目の区面接に呼ばれる区を、想定内に収めることができます。
強気で攻める人は、Bランクの中でも倍率が高めの区を選びます。
リスクを回避したい人は、Bランクの中でも倍率が低めの区を選びましょう。
【特別区】第3志望
必ず志望3区内の内定を目指すため、第3志望にはCランクの区を書くのがおすすめです。
Cランクの区を書かなくても、最終合格順位がわるければCランクのいずれかの区に提示される場合がほとんどです。
それでも書いておけば、Cランクの中でも自分が志望した区に提示されやすくなるため、想定内に収めることできます。
ちなみに、第3志望に定員の多い世田谷区などを選ぶ受験生がいます。
ですが、世田谷区は第2志望として圧倒的に1番人気の区です。
第3志望に書いても提示される可能性は低いと言えます。
ところで、Cランクの区とはいえ、仕事のやりがいが無かったり職場環境がわるかったりするとは、一概には言えません。
反対に、Aランクの区に合格したものの、すぐに転職してしまう人もいます。
大切なのは、倍率だけに惑わされず、合同説明会やインターンシップを通して、自分が本当に働きたい区をリサーチする努力を怠らないことです。
というわけで、志望区を選ぶときによくある質問を次にまとめました。
【特別区】志望3区選びのQ&A
志望区の合同説明会は行った方がいい?
ぜひ行きましょう。
合同説明会のメリットは、志望区を選ぶ時の判断材料になること、各区の人気度合(説明会参加者の集まり具合)が分かること、そして区面接のアピールポイントになることです。
第1志望だった区でも説明会に行ってみたら、なんだか職員の説明がイマイチでがっかりしたとか、反対に空いていた区でたまたま説明を聞いてみたら、おもしろそうな職場だと感じたとか、いろいろな発見があります。
志望区は地元・縁がないと選べない?
当てはまる方がベターです。
志望区で生まれ育ったり、大学で通っていたり何らかの縁があることは、志望区を選ぶときの重要な要素です。
面接担当者も人間ですから、縁を感じれば心証がよくなります。
地元でもなく縁もない場合、やりたい仕事に結び付けてみるのがおすすめです。
たとえば、〇〇分野の仕事に関心があるから、先進的な取り組みをしている〇〇区を選ぶという具合です。
また土地勘のない場合、庁舎や公共施設を見学したり、まち歩きをしてお気に入りスポットを探しておきましょう。
「区の魅力は?」という質問は定番です。
志望区の情報は、各区に伝わる?
伝わります。
志望していない区から、「志望していないけど区面接に来ますか?」と呼ばれることもあります。
区面接で、志望3区の順位付けと理由を聞かれることもあるので、選んだ根拠を自分なりに明確にしておきましょう。
ただ、必ずしも志望3区に一貫性はなくても大丈夫です。
志望区ではない区から面接に呼ばれたら?
辞退は控えましょう。
面接を辞退すると、その後の扱いが非常に不利になります。
併願していて余裕があると判断されるからです。
一度辞退すると、次に他の区から面接に呼ばれる保証はまったくありません。
運よく他の区から面接に呼ばれても、前回の辞退の理由は必ず質問されるため、しっかりと答えを用意しておく必要がありますし、何より自己PRに使う時間がなくなってしまいます。
したがって、辞退はせず、面接は受けることをおすすめします。
どうしても行きたくない区であれば、あえて何も準備をせず面接に臨み、不選択になる方法を選びましょう。