こんにちは!編集長です。
この記事では、特別区採用試験の論文試験でどんな課題が出題されても、安定して高い評価を得る論文の書き方を解説します。
特別区において、論文試験の重要性は圧倒的に高いです。
論文の対策法を余すことなく解説しているので、じっくり読んでくださいね。
【特別区】論文試験の「配点」
特別区人事委員会は、試験の配点を公表していません。
ですが、予備校による長年の統計的なデータ分析から、次のように配点の割合が推測されています。
教養択一試験 | 専門択一試験 | 論文試験 |
100点 | 100点 | 300点 |
ご覧のとおり、論文試験の配点が非常に高いです。
これは、他の公務員試験では見られない特徴です。
受験生の多くは、教養や専門試験の学習に力を入れて取り組みます。
ですが、それ以上に論文試験の対策をしっかりと行うことが、合格する上で何より重要です。
また、論文試験は採点による得点差が大きくなりやすい試験です。
たとえば、300点満点で5段階評価の場合、1段階評価が変わると60点の得点差がつきます。
これを教養試験や専門試験(100点満点・40問)で巻き返そうとすると、24問(60点)多く正解しなければなりません。
これがどれだけ大変なことか、かんたんに想像できますよね。
論文試験の対策が合否を左右すると言えます。
【特別区】論文試験の「試験時間・字数」
次に、特別区の論文試験の試験時間と字数を確認します。
形式 | 試験時間 | 字数 |
2題中1題を選択回答 | 80分 | 1,000字以上1,500字程度 |
字数は1,000字以上ですが、少なくとも1,200字程度は書いてほしいです。
高い評価を得る論文の構成で文章を書くと、必然的にこのくらいの文章量になるからです。
ところで、他の公務員試験では試験時間と字数はどのくらいでしょうか。
一般的には、60分・800字や、90分・1,200字の場合が多いです。
特別区の論文試験は、80分・1,200字以上(目標)なので、試験時間は短めです。
80分の試験時間の時間配分は、このようになります。
ステップ | 時間配分 |
①課題を熟読する。 | 2分 |
②主題を考える。 | 3分 |
③答案構成を考える。 | 10分 |
④実際に文章を書く。 | 60分 |
⑤答案を読み返す。 | 5分 |
実際に文章を書ける時間は、60分くらいしかありません。
しかも、採点者が読みやすいよう文字を丁寧に書く必要があります。
事前に論文対策を十分にしておかないと、試験時間内に答案を書き上げるのは難しいです。
試験本番で「頭が真っ白になって、原稿用紙の半分も埋まらなかった」とならないよう注意しましょう。
【特別区】論文試験の「定番テーマ」
続いて、過去によく出題されている定番テーマをおさえましょう。
公務員試験の全体として、論文試験で出題されるテーマは大きく4つに分類されます。
「政策課題」「行政運営」「抽象問題」「自分自身」の4つです。
このうち、特別区の論文試験では「政策課題」「行政運営」のテーマしか、過去に出題されていません。
「抽象問題」「自分自身」のテーマの対策は不要です。
いくらでもテーマが作れる「抽象問題」「自分自身」のテーマなどと異なり、「政策課題」「行政運営」から出題されるテーマは種類が決まっているので、出題が予想されるテーマは全て事前に対策しておくのが必勝法です。
【政策課題】テーマ
特定の社会問題について、課題や対策を問うテーマです。
例年、2題のうち1題が政策課題のテーマから出題されています。
出題テーマに偏りは見られず、特別区の抱えるあらゆる政策課題から、バランスよく出題されています。
政策課題に関する重要テーマはこちらです。
【行政運営】テーマ
地方自治や行財政について、課題や対策を問うテーマです。
例年、2題のうち1題が行政運営のテーマから出題されています。
政策課題のテーマに比べて、出題予想テーマが限られるのが特徴です。
【抽象問題】テーマ
とらえどころがなく、答案を書きにくいテーマの代表例です。
例えば、他の公務員試験では、「混沌と未来について」や「自立心について」などがまれに出題されます。
少子化や産業振興など具体的なテーマに比べて、何を書けばいいかとまどいます。
幸い、特別区の論文試験では、こうした抽象問題のテーマは出題されません。
【自分自身】テーマ
自分自身の経験や抱負を問うテーマです。
志望動機や困難を乗り越えた経験などが定番です。
特別区の論文試験で出題されたことはありません。
ただし、面接試験では問われやすいテーマなので、面接対策として考えておくことは重要です。
ここまでのまとめです。
【特別区】論文試験の「評価基準」
次に、論文試験の一般的な評価基準を紹介します。
評価基準①:文章力
1つ目の評価基準は「文章力」です。
文章の「形式面」と「内容面」を評価します。
形式面では、誤字脱字や語彙の不足など、標準的な文章力があるかどうかが見られます。
内容面では、課題を正確に理解して答えているか、論理的な文章が書かれているかどうかが見られます。
文章力が評価されるのは、特別区職員の仕事と関係しています。
特別区職員になると、報告書を書いたり公的書類を作成する機会がたくさんあります。
こうした文章を作成する際に、誤字脱字が多かったり、自分の考えを正確に伝えることができなければ、業務に支障をきたしてしまいます。
とはいえ、受験生にハイレベルな文章力は要求されていません。
職務に必要な文章力は、採用後に仕事をする中でしっかりと学ぶからです。
採用試験で求められる文章力は、「採用後に訓練すれば大丈夫そうだ」と思われるレベル、つまり標準的な文章が書けるレベルでよいのです。
したがって、論文を書くときは、「与えられた課題を熟読すること」「論理的な構成で文章を書くこと」を心掛けることが重要です。
具体的には、後述する「論文の書き方」を参考にしてください。
評価基準②:人柄
2つ目の評価基準は「人柄」です。
受験者の「熱意」と「適性」を評価します。
特別区職員に本気でなりたいという強い熱意が感じられるかどうか、特別区職員に向いている行動力や考え方を持っているかどうかが見られます。
実際の採点項目に、「熱意」などの項目があるかどうかは分かりません。
また、論文の参考書などには、「熱意は評価されず、客観的な文章力のみが評価される」と解説しているものもあります。
しかし、採点者が人間である以上、どこか他人事のような文章よりも、前向きな姿勢が伝わる文章の方が高い評価を得られるのは当然です。
1つ目の評価基準である文章力に加えて、熱意や適性などの人柄も重要な評価基準であると考えられます。
したがって、答案を書くときは、「前向きな姿勢」「丁寧な文字」を心掛けることが重要です。
具体的に、前向きな姿勢を示すための論文の例文を紹介します。
ここまでのまとめです。
【特別区】論文試験の「対策の流れ」
続いて、特別区の論文対策の流れを順番に解説します。
①素材を集める
答案を書くための素材を収集します。
日頃から新聞やテレビで、関心のあるテーマに目をとおしておきましょう。
ただし、それだけでは論文を書く素材を得るには不十分です。
そこで、特別区の受験生のバイブルと呼ばれる「特別区職員ハンドブック」を読んでおくのがおすすめです。
細かなデータを記憶する必要はないので、特別区の抱える重要課題や政策をおさえておきましょう。
ここで集めた素材は、論文はもちろん面接対策になります。
論文試験と面接試験は配点が圧倒的に高いので、手を抜かずに対策しましょう。
②答案の書き方を学ぶ
論文の答案は、ある程度決まった書き方があります。
論理的な構成にするための書き方です。
たとえば、大まかには「①定義」「②重大性」「③課題」「④解決策」「⑤まとめ」の順番で書きます。
こうした書き方を知らず闇雲に答案を書いてしまっては、高評価を得ることはできません。
論文の書き方を勉強する方法はいくつかありますが、予備校を活用することがもっとも効果的です。
予備校の受験ノウハウは圧倒的です。
予備校といっても、高い授業料を支払って指導を受ける必要はありません。
予備校で使用している「論文のテキスト」さえ手にはいれば、独学でも十分に学習できます。
テキストはフリマアプリで手軽に購入可能です。
予備校のテキストを使えば、他の受験生に大きな差をつけられます。
③自分で答案を書く
いよいよ、自分で答案を書いてみます。
素材を集め、書き方を学んだだけで、「試験本番はなんとかなりそうだ」と勘違いしてしまう人がいます。
ですが、論文は実際に書く練習をしなければ、本番でうまく書くことはできません。
定番テーマをいくつか選び、自分で考えて答案を書いてみましょう。
たくさんの答案を書けば書くほど、スラスラと書けるようになります。
答案を書いた後は、誤字脱字がないか自分で読み返してみることも大切です。
④答案を人に見てもらう
答案を書いたら、それで終わりではありません。
答案を周りの人から見てもらいましょう。
家族・友人・先生、誰でも構いません。
答案を読んでもらったら、分かりづらい表現や間違った日本語がないかどうか、教えてもらいましょう。
自分では気づかないことでも、他人が見ると違和感を感じやすいものです。
⑤答案を修正する
周りの人からもらったアドバイスをもとに、答案を修正します。
さらに自分でも読み返し、よりよい答案に仕上げていきます。
ある程度納得のいく答案ができあがったら、何度も読み込み、答案の内容を頭に入れておきましょう。
試験本番で、同様のテーマが出題されたときに役立ちます。
独学でも上位合格する人たちは、こうした対策を十分にしています。
自分で書いた答案が多ければ多いほど、合格に近づくことを知っているからです。
【特別区】論文試験の「対策の時期」
「論文対策はいつから始めたらいい?」と疑問に思いますよね。
その答えは、「できるだけ早くから」です。
論文対策の流れで説明したとおり、やることはたくさんあります。
試験本番の一週間前からでは、とても間に合うものではありません。
できれば、教養試験や専門試験と並行して対策に取り掛かることをおすすめします。
遅くとも年明け頃には、論文対策に本腰を入れてください。
論文試験は教養試験や専門試験よりも配点が高いため、十分な対策が必要です。
また、論文対策は面接対策にもなります。
「絶対に特別区に合格する!」という強い気持ちをもって、がんばりましょう。
【特別区】論文試験の「おすすめ参考書」
論文対策で欠かせない参考書が、「特別区職員ハンドブック」です。
特別区の抱える重要課題や力を入れている取り組みが紹介されています。
これは、面接でも問われる事柄です。
ざっくりで構わないので、必ず目を通しておきましょう。
次に、「予備校の論文対策テキスト」がおすすめです。
論文の書き方について、予備校の合格ノウハウが凝縮しています。
本来であれば予備校に通わなければ手に入りませんが、近年はフリマアプリで購入可能です。
予備校の論文対策テキストを使って論文の書き方を学ぶかどうかが、合否の大きな分かれ目になります。
最後に、「論文の模範解答集」が役立ちます。
出題が予想されるあらゆるテーマについて、現状や課題を自分で調べるのは、とても手間がかかります。
その点、模範解答集は、少子化や防災対策などの各テーマについて、基本的な知識や効果的な取り組みがコンパクトにまとまっています。
また、予備校の論文対策テキストを使って論文の書き方を学んでも、いざ自分で答案を書いてみようとすると、手が止まってしまいがちです。
そのとき、論文の模範解答集をお手本として読めば、自分の答案を簡単に考えることができます。
特別区をはじめ、公務員試験の論文対策の主流は、良質な模範解答集を活用する方法になりつつあります。
他の受験生に差を付けられないように、活用できるものは積極的に活用しましょう。
【特別区】論文試験の「書き方」
おすすめ参考書でお伝えしたとおり、論文の書き方を学習するには予備校の論文対策テキストを使うべきです。
ここでは、かいつまんで紹介します。
①本文の書き始め
解答用紙に、題名や氏名を書く必要はありません。
一行目から書き始めましょう。
ただし、最初の1マス目は必ず空けます。
②読点・句読点と文末の処理
読点(、)や句読点(。)、鍵括弧(「」)、小さい文字(っゃ)は1文字として扱います。
ただし、行の最初のマスには読点や句読点、閉じ括弧(」)は記してはいけません。
前の行の最後のマスに、文字と一緒に記します。
③数字とアルファベット
2桁以上の数字や2文字以上のアルファベットは、1マスに2文字を記します。
ただし、NPO(非営利組織)などの略称は1マスに1文字ずつ記します。
④文末表現の注意
日本語の文体は、「だ・である調」と「です・ます調」があります。
論文では、「だ・である調」に統一するのが原則です。
「です・ます調」で書くと減点される場合もあるので、注意しましょう。
ちなみに、「おっしゃった」「うかがった」など敬語を使う必要はありません。
⑤字数の目安
特別区の論文試験の字数は、「1,000字以上1,500字程度」です。
1,000字以上なので、それより少ない場合は大幅な減点、あるいは採点対象とならない可能性があります。
一方、上限は1,500字程度なので、それを多少超えても大幅な減点にはなりません。
ただし、1,600字や1,700字を超えるような場合、減点される可能性があります。
字数の目安は、上限の8割から9割、つまり1,200字から1,350字程度が適正です。
1,000字程度の字数で、高評価の論文の内容を書くのは困難です。
一方、1,500字を目標に書くと、想定以上に字数が多くなり過ぎるリスクがあります。
目安の字数に収まらない場合でも、1,000字は必ず超えるようにしましょう。
⑥文字の印象
丁寧で、濃い文字を書きましょう。
書きなぐったような乱雑な文字では、やる気や資質を疑われます。
また、薄くて読みにくい文字も印象がわるくなります。
筆圧の弱い人は、濃いめの鉛筆がおすすめです。
⑦課題文の熟読
論文の出題者は、「こういう内容を書いてほしい」という意図をもって出題しています。
したがって、課題文を熟読し、課題の意図を正しく把握することが大切です。
どれだけ優れた文章を書いたとしても、出題意図の把握ができていなければ、そもそも課題に応えていないことになり、よい評価はもらえません。
反対に、少しくらい文章構成のバランスや知識面で劣っていたとしても、出題意図の把握さえしっかりできていれば、合格レベルの評価がもらえます。
例文をみてみましょう。
たとえば、
「都市化が進む中で安心して住めるまちをつくるために行政が果たす役割について述べなさい。」
という課題があったとします。
答案に書くべき内容はなんだか分かりますか?
それは次の3つです。
論点が1つでも抜けると、評価は大きく下がってしまいます。
課題文は3回くらいじっくり読み、囲みや下線で区切って、論点を正確に把握するようにしましょう。
⑧答案の構成
論文には、優れた構成があります。
予備校で指導する書き方です。
特別区の論文試験で出題される政策課題や行政運営に関するテーマの場合、構成はこのようになります。
「答案をどんな構成で書いたらいいか分からない」と迷う必要はありません。
優れた構成の書き方を身に付け、試験本番ではそれに当てはめて考えましょう。
【特別区】論文試験の「コツ」
論文の評価を高めるためには、ちょっとしたコツがいくつかあります。
予備校のテキストで学習できるので、ここではかいつまんで紹介します。
短い文を積み重ねて書く
1つの文で主語と述語をいくつも使うと、なにを言いたいのか分からなくなります。
なるべく主語と述語はワンセットで、文を短くしましょう。
平易な表現で書く
求められる語彙は高校レベルです。
ムリに難しい表現や漢字を使っても評価は上がらず、間違いのリスクだけが高まります。
だれでも理解できる自然な表現を心掛けましょう。
主語と述語を対応させる
「AはBである。」という文章の基本を外すと、読みにくくなります。
主語が抜けたり、主語と述語が離れすぎないよう注意が必要です。
【特別区】論文試験の「Q&A」
最後に、受験生の多くが悩む質問に答えていきます。
特別区の論文試験で、書いてはいけないことはある?
批評家タイプと思われるような文章は、書いてはいけません。
どことなく他人事のように現状を論じたり、行政を批判したりすることは控えましょう。
未来の特別区職員として当事者意識をもち、前向きな姿勢を示すことが大切です。
極端な考え方をしていると思われる文章も、書いてはいけません。
特定の政党や思想に関する主張は避けるべきです。
また、採点者の注意を引くために奇抜なことや個性的な文章を書く必要はありません。
メンタルが弱そうだと思われる文章も、書いてはいけません。
特別区は、区民のために積極的に行動できる人を求めています。
肉体的にも精神的にもタフであることをアピールしましょう。
誤字脱字が多いと、不合格になる?
不合格になる可能性はあります。
誤字脱字や漢字の間違いなど、形式面の採点は減点方式です。
間違いの数だけ減点が積み重なります。
一方、文章の論理性や表現力など、内容面の採点は加点方式です。
満点以上には加点されません。
たとえば、100点満点で50点が合否のボーダーラインだとします。
内容面が60点・形式面がマイナス15点であれば、得点は45点になり不合格になってしまいます。
予備校のテキストで書き方を学び、つまらないミスを量産しないよう注意しましょう。
論文が苦手で不安なときは、どうしたらいい?
得意なテーマをいくつか用意しておきましょう。
特別区の論文試験では、出題テーマが限られています。
そこで、知識や問題意識がある程度豊富なテーマを用意しておけば、多くの出題テーマに対応しやすくなります。
例文をみてみましょう。
たとえば、
「災害時における市民と行政の役割について」
「高齢社会における安全安心な社会の実現について」
というテーマの出題が予想されるとします。
この場合、それぞれの答案を事前に用意しておく必要はありません。
つまり、「高齢者の防災対策」という答案を1つ用意しておけば、どちらの課題にも対応することができます。
得意なテーマをいくつか持っておくことで、「どんな課題が出題されても何とかなる!」と自信がつくはずです。