【裁判所事務官】論文過去問の模範解答例を一挙公開!

模範解答例

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「定番テーマに王道の解答を! 公務員試験 論文解答ライブラリー」の編集長です。

このブログは、公務員採用試験の論文試験でよく出題されるテーマや、試験種ごとの論文試験の過去問について、模範解答例を紹介しています。

 

模範解答例を書いた人

編集長
編集長

旧帝大を卒業後、国家公務員として省庁で人事の仕事をしていました。

現在は退職し、公務員志望者の論文添削や面接指導などをおこなっています。

 

この記事では、裁判所事務官の論文試験の過去問について、模範解答例を紹介します。

模範解答例は、論文指導のプロが予備校の論文構成に準じて答案を書き、推敲を重ねた良質な答案です。

この模範解答例を読めば、答案を書くために必要な知識を効率的にインプットすることができます。

また、模範解答例をお手本にしながら自分で答案を書いてみることで、万全な論文対策が可能です。

これから受験を控える皆さんに、ぜひ活用してもらえると嬉しいです。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例「2021年過去問:デジタル化」

【裁判所事務官】論文テーマ

オンラインによるコミュニケーションの普及によって、社会生活や私生活におけるコミュニケーションがどうのように変化していくと考えられるか、変化に伴い生じると考えられる問題とともに論じなさい。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例

定義
オンラインのコミュニケーションの普及による変化は、業務の効率化や柔軟な働き方が可能になることである。
従来から、電子メールやSNSは活用されていた。
加えて、コロナ禍の影響により、ビデオ会議ツールを用いたオンラインのコミュニケーションが急速に普及している。
対面のコミュニケーションに比べて、オンラインのコミュニケーションは時間と場所の制約が少ない点で利便性が高く、労働生産性の向上が期待できる。
とりわけ、我が国で増加しつつある仕事と育児・介護の両立を望む労働者にとって、リモートワークを可能にするオンラインのコミュニケーションは重要である。
一たび便利さを享受した人間は、不便な様式に戻ることは難しい。
したがって、オンラインのコミュニケーションは今後ますます進んでいくと考えられる。

問題
しかし、こうした変化に伴い生じる問題も想定される。
第一に、オンラインのコミュニケーションは意思疎通が図りにくいことだ。
コミュニケーションには言語・非言語の面があり、言語面で伝えきれない内容を非言語面で補完して意思疎通を図ることが可能である。
ところが、表情や声色などの非言語情報はメールやSNSはもちろん、ビデオ会議ツールでも伝わりにくい。
それゆえ、お互いに真意が分からず踏み込んだ議論ができなかったり、要らぬ誤解を招きやすい。
第二に、対面のコミュニケーション能力が乏しくなりやすいことだ。
オンラインのコミュニケーションがどれだけ普及しようとも、対面のコミュニケーションの重要性は変わらない。
対面のコミュニケーションでは、相手の感情や態度の変化を読み取り、自身の伝え方を調整しながら相互に意思疎通を図ることが欠かせない。
一方、オンラインのコミュニケーションでは、自身の伝えたいことを一方的に伝える形になりやすい。
したがって、オンラインのコミュニケーションに慣れすぎると、相手の機微を理解し、信頼関係を構築することが困難になる可能性がある。

解決策
それでは、こうした問題に対してどのように対応する必要があるか。
第一に、言語・非言語の両面で意識的にコミュニケーションを図るべきである。
言語面については、伝達内容をより正確に、相手にとって分かりやすい言葉で伝えるほか、相手が正しく理解しているかどうか擦り合わせを細やかに行うことが重要である。
非言語面については、表情がよく分かるように話したり、相手の言葉に頷いたりして、お互いの真意を理解し合えるよう努める必要があるだろう。
第二に、対面のコミュニケーションの機会を設けるべきである。
時間と場所の問題が無ければ実際に顔を合わせてミーティングを行ったり、普段は電子メールで済ませいていた用件でも電話で連絡するなど、積極的に意思疎通を図ることが有効であろう。

まとめ
今後もオンラインのコミュニケーションは、技術の進化とともに普及し続けるだろう。
オンラインのコミュニケーションのデメリットを補いながら、上手く活用していく必要がある。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例「2020年過去問:高齢化」

【裁判所事務官】論文テーマ

10年後の日本に起こり得るとあなたが想定する現象を、そのように想定する理由とともに述べた上で、当該現象が社会に与える影響とそれに対して取り得る対策について論じなさい。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例

現象
10年後の日本に起こると想定される現象は、介護を必要とする高齢者の急増である。
なぜなら、2030年の日本は、少子高齢化がますます進展する結果、総人口の約3分の1が高齢者になると予測されているからだ。
とりわけ、要介護率が飛躍的に高まる75歳以上の後期高齢者は、2030年まで急速に増加すると見込まれる。

影響
この現象が社会に与える影響は何か。
第一に、介護人材の不足が深刻化することだ。
介護需要の増大に対して、生産年齢人口の減少に伴い介護人材の供給が追い付かないと推定されている。
第二に、介護保険制度の持続可能性が危惧されることだ。
税収は生産年齢人口の減少に伴い減少する一方、介護給付費は高齢人口の増加に伴い増していくだろう。

対策
それでは、この現象に対して取り得る対策は何か。
第一に、介護サービスの生産性を向上し、より少ない介護人材でより質の高いサービスを提供できる環境を整備するべきである。
まず、不要な事務作業の削減を図ることが重要だ。
介護保険は制度や手続きが複雑になり、事業者は書類作成などの業務が増大している。
したがって、国がリーダーシップを発揮し、不要な申請・提出書類の削減を進める必要がある。
加えて、介護ロボットや介護支援ボランティアの活用を促進することが肝要だ。
介護ロボットは高額にも関わらず、効果が見えにくいため導入をためらう事業者が多い。
そこで、介護ロボットの導入や活用法についてアドバイザーに無料で相談できる機会を提供し、介護現場への積極的な導入を促したい。
また、地域の元気な高齢者がボランティアとなり、介護施設で食事や入浴の準備・片付け、ベッドメイキング、利用者の話し相手を担うことで、介護士は利用者のケアに専念できるだろう。
同時に、ボランティアとして活動する高齢者にとっては、自身の介護予防につながるはずだ。

第二に、介護給付費の抑制を図り、介護保険制度の安定化を実現するべきである。
まず、給付適正化により、不要な給付を削減することが重要だ。
介護サービスは利用者のモラルハザード、つまり過剰・不当なサービス利用を引き起こしやすい。
たとえば、在宅介護が可能にも関わらず、介護施設への入所を希望することなどである。
したがって、保険者である自治体が責任を持ち、ケアプランの点検など給付適正化事業の実施を強化することが望まれる。
国は、給付適正化事業に積極的に取り組む自治体を評価し、実施内容に応じて補助金の支出を増額するなど、自治体にインセンティブを与える仕組みを工夫して整えると有効であろう。
加えて、生涯現役社会を実現し、介護を必要とする高齢者の増加に歯止めをかける必要がある。
高齢者の中には、働く意思や社会貢献への意欲を持っている者が少なくない。
したがって、定年を廃止または70歳以上に引き上げた企業に対して奨励金を支給し、高齢者雇用の機会を増やすとともに、市民ボランティアやNPOの活動に高齢者の経験を活かす取り組みを促進することが重要だ。
健康で元気に活躍する高齢者が増加すれば、結果として介護給付費の抑制が図られるだろう。

まとめ
10年後に起こる変化と影響は深刻である。
国は上記の取組を通じて、超高齢社会に対応しなければならない。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例「2019年過去問:ワークライフバランス」

【裁判所事務官】論文テーマ

今の社会であなたが考える良い職場とは何かについて理由とともに論じ、それを実現するためにどうのような方策が考えられるか述べなさい。

 

【裁判所事務官】論文模範解答例

定義
良い職場とは、労働者がそれぞれの事情に応じ、多様で柔軟な働き方を選択できる環境が整っている職場である。
それははぜか。
少子化の進展に伴い生産年齢人口の減少が続く我が国にとって、女性をはじめ就業意欲のある全ての者が安心して働ける労働環境を整備し、労働参加率を高めることが喫緊の課題であるからだ。
しかし、出産や育児を機に退職せざるを得ない女性が未だに多いほか、介護離職者は年間約10万人に達する。
したがって、時間や場所に制約のある労働者であっても就業を継続できる体制を整え、ワークライフバランスを実現する必要がある。

課題
良い職場を実現する上で課題は何か。
第一に、長時間労働が常態化していることだ。
我が国の年間総実労働時間は減少傾向にあるが、先進諸国に比べて労働時間は高止まりしている。
第二に、柔軟な勤務制度が整っていないことだ。
フレックスタイムやテレワーク、短時間勤務制度の導入率は十分ではない。

解決策
それでは、良い職場を実現するためにどのような方策が考えられるか。
第一に、長時間労働の是正を図るべきである。
長時間労働の改善は、労働生産性を高め付加価値の創出につながるとともに、労働者の健康確保やワークライフバランスの実現につながる。
したがって、企業に対して長時間労働の解消について周知を強化することが重要だ。
たとえば、有給休暇の計画的な取得や、ノー残業デイの制定を推奨することが挙げられる。
ただし、中小企業の多くは人手不足や低い生産性によって、長時間労働に頼らざるを得ない状況があるだろう。
そこで、雇用のミスマッチを解消し人手不足を補ったり、業務プロセスを見直した上でICTの導入により生産性を向上するなど、中小企業が長時間労働を解消しやすい環境を整えることも同時に重要となる。
このとき、国は企業の取組をサポートする専門家の派遣を強化すると有効だろう。

第二に、柔軟な勤務制度の促進を図るべきである。
現状、フレックスタイムを導入する企業は増えつつあるが、テレワークや短時間勤務制度の導入は十分に進んでいない。
その理由として、テレワークは仕事と育児・介護の切り分けが難しいことや、短時間勤務制度はフルタイムの社員と比較し、給与や昇進で差別されるのではないかとためらう労働者が少なくないことが挙げられる。
したがって、これらの導入にあたっては、適正な労務管理や人事評価のガイドラインを示すとともに、好事例をまとめて活用を促す必要があるだろう。
加えて、経営者や管理職に向けて、柔軟な勤務制度の導入に関するセミナーや研修を開催し、積極的な取組を促すことが重要である。
このとき、制度を整備した場合、そうでない場合と比べて社員の仕事への意欲や生産性が向上することをアピールすると有用であろう。

まとめ
良好な職場環境は、我が国の持続的な経済発展に不可欠である。
以上の方策を通じて、意欲と能力のある労働者が活躍できる職場を実現する必要がある。

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