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「定番テーマに王道の解答を! 公務員試験 論文解答ライブラリー」の編集長です。
このブログは、公務員採用試験の論文試験でよく出題されるテーマや、試験種ごとの論文試験の過去問について、模範解答例を紹介しています。
模範解答例を書いた人
旧帝大を卒業後、国家公務員として省庁で人事の仕事をしていました。
現在は退職し、公務員志望者の論文添削や面接指導などをおこなっています。
この記事では、特別区の論文試験の過去問について、模範解答例を紹介します。
模範解答例は、論文指導のプロが予備校の論文構成に準じて答案を書き、推敲を重ねた良質な答案です。
この模範解答例を読めば、答案を書くために必要な知識を効率的にインプットすることができます。
また、模範解答例をお手本にしながら自分で答案を書いてみることで、万全な論文対策が可能です。
これから受験を控える皆さんに、ぜひ活用してもらえると嬉しいです。
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【特別区】論文模範解答例:2023年過去問①「若者への情報発信」
【特別区】論文課題
スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、区民生活のデ ジタル化が進む中で、行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。
特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。
また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。
このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
若年層に伝わりやすい行政情報の発信とは、若年層一人ひとりの興味や関心に応じ、区政情報や地域情報を分かりやすく発信するとともに、対象者の関心を高め期待する行動を促す取り組みである。
②重大性
なぜ、取り組みが求められているのか。
それは、若年層に行政情報が十分に行き届いていない懸念があるからだ。
インターネットの普及やICTの発展によって、若年層を中心に生活のデジタル化が進み、情報収集手段や価値観、生活環境が大きく変化している。
こうした中で、従来の情報発信だけでは、今後の社会の担い手となる若年層の多くは行政情報との接点がなくなる可能性が高い。
したがって、若年層に伝わりやすい行政情報の発信に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題は何か。
第一に、既存の情報発信媒体は若年層に情報が届きづらいことだ。
若年層は広報誌に目を向ける機会が乏しい。
また、ホームページは自らアクセスしなければ必要な情報を得られず、行政情報に対する関心が薄い若年層のアクセスは見込みづらい。
第二に、若年層に伝わりやすい情報発信が行われているか、効果を検証する必要があることだ。
行政情報は一方的に発信するだけでは意味をなさない。
対象者の関心を高め、期待する行動を促すことではじめて意味をなす。
若年層のニーズに則した情報発信を継続的に行うため、その効果を検証することが必要である。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、SNSやアプリケーションを活用し、若年層一人ひとりの興味や関心に応じた行政情報の発信を図るべきである。
ユーザー登録時に興味や関心がある分野を登録すると、個別化された行政情報が随時届き、通知によってそれに気づけるようなシステムを企業と連携して構築するのだ。
これにより、若年層はホームページにアクセスしなくとも、必要な情報を折よく得ることができる。
このSNSやアプリケーションの周知には工夫を施したい。
ツイッターなどの若年層の利用が多いツールを活用し、便利な使い方や登録方法を同年代の特別区職員が写真やイラスト付きで繰り返し紹介する。
こうして利用者が増加すれば、若年層と行政情報の接点が保たれるとともに、行政に対する関心が高まる効果が期待されるだろう。
第二に、行政情報がどれだけ伝達しているか、若年層に対して広聴を行うべきである。
具体的には、発信したデザインの見やすさや内容の分かりやすさ、実際に行動に移したかどうか意見を聴取する。
聴取は、上記のSNSやアプリケーションを活用すると効率的だ。
若年層が気軽に投稿しやすいようボタンによる評価とするほか、自由入力フォームを用意し、多様な意見を受け付ける。
得られた評価から若年層のニーズや情報発信の改善点を分析し、彼らに伝わりやすい行政情報の発信を継続的に実施するために役立てていく。
⑤まとめ
行政運営に区民の理解と協力は不可欠である。
私は特別区職員となり、今後の社会の担い手となる若年層に伝わりやすい情報発信に努めたい。
【特別区】論文模範解答例:2023年過去問②「人口減少下における人材活用」
【特別区】論文課題
我が国では、少子化を背景とした人口の減少傾向や、高齢化の更なる進展等による経済社会への影響が懸念されている中で、社会経済活動の維持に向けた新たな人材の確保という課題が生じています。
こうした課題に対して、特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。
このような状況を踏まえ、人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
人口減少下における人材活用とは、少子高齢化により生産年齢人口の減少が見込まれる中、消防団や自治会などの地域活動の担い手として、従来の高齢者や専業主婦のみならず、外国籍住民や若年層などの幅広い主体の参画を促す取り組みである。
②重大性
取り組みが求められる背景は何か。
地域活動の担い手は高齢化により不足しつつあるほか、夫婦共働きが増加する現在において、専業主婦の参画をモデルとする地域活動の形態は成り立たない。
地域活動が機能しなくなれば、災害時の共助が見込めなくなることに加えて、住民の地域に対する帰属意識がさらに低下する懸念がある。
したがって、地域活動の幅広い担い手を確保するため、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題は何か。
第一に、外国籍住民と地域社会の接点が少ないことだ。
彼らが地域活動の担い手として活躍するためには、元の地域住民との相互理解が欠かせない。
第二に、若年層の地域社会に対する関心が希薄化していることだ。
核家族化や個人主義の進展により、若年層が地域社会で様々な体験をする機会は乏しくなりつつある。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、異文化交流を促進し、外国籍住民と元の地域住民との相互理解の醸成を図るべきである。
交流を促すイベントは既に各地で行われているが、外国籍住民の参加が十分ではない課題がある。
一方、SNSでは特定の国籍の住民同士がグループを作り、積極的に交流しているケースがある。
したがって、SNSの特徴を分析しながら外国籍住民に交流イベントへの参加を広く呼び掛けることが重要だ。
さらに、交流の機会はイベントに留まらない。
たとえば、防災訓練の活用が挙げられる。
地域の避難訓練に外国籍住民が参加することで、言語面や習慣面での課題を相互に理解するとともに、外国籍住民の防災意識が高まることも期待される。
こうした取り組みにより、外国籍住民の地域参加を促し地域社会の一員として活躍できるよう支援したい。
第二に、教育機関と連携し、若年層が地域社会をフィールドに体験学習できる機会を提供するべきである。
具体的には、高校生や大学生が商店街振興や防災などに関する課題を設定し、地域住民とともに解決を目指す授業を取り入れる。
この経験は、若年層が地域への問題意識を強く持つことを通じて、地域社会への関心を高めることにつながるだろう。
また、学んだ成果をまとめ、小中学校の児童生徒にプレゼンテーションとして発表する場を設けると一層有効である。
少し年上の世代による発表は、子どもが地域社会に対する興味を抱くきっかけを与え、将来地域活動の担い手として活躍する土壌が育まれると期待される。
⑤まとめ
地域活動は住民の安全安心な暮らしを支える基盤である。
私は特別区職員となり、持続的な地域活動が行われるよう多様な主体の参画を促したい。
【特別区】論文模範解答例:2022年過去問①「限られた行政資源による区政運営」
【特別区】論文課題
特別区では、地方分権の進展や、児童相談所の設置に加え、新型コロナウイルス感染症対策により、前例のない課題やニーズが生まれ、区民が期待する役割も、かつてないほど複雑で高度なものとなっています。
特別区がこれらの課題の解決に向けた取組を進めていくには、区民に最も身近な基礎自治体として、自立性の高い効率的な事務運営が重要です。
このような状況を踏まえ、区民の生命や生活を守るための、限られた行政資源による区政運営について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
限られた行政資源による区政運営とは、官民協働の促進により市民・NPO・企業と協力して地域課題の解決に取り組むとともに、業務効率化の推進により重要度の高い政策立案や行政サービスの提供に注力する取り組みである。
②重大性
取り組みが求められる背景は何か。
一つに、成熟社会を迎え、住民ニーズが多様化・高度化していることが挙げられる。
一方、今後の財政状況を鑑みれば、行政が単独で全てのニーズに対応し続けるのは困難だ。
したがって、官民協働や業務効率化を通した効率的な事務運営を図るため、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、官民協働について、民間は自己の利益を優先する懸念があることだ。
民間とはいえ行政サービスを提供する以上、住民全体の福祉追求を目的としなければならない。
第二に、業務効率化について、非効率的な事務作業が多く存在することだ。
改善の余地がありながら、前例踏襲で行われている業務は少なくない。
④解決策
それでは、行政はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、民間が提供するサービスの質が保たれていることを管理監督するべきである。
まず、事前の管理を徹底することが重要だ。
民間は高い専門性や問題解決力を備えている場合が多いが、そうでない場合もある。
行政サービスを任せるに足りる存在かどうか、事前のチェックが欠かせない。
具体的には、任せるサービスの事業内容・予想コスト・達成目標をあらかじめ計画した上で、参加者を公募して競わせることにより一定の質が確保されるはずだ。
次に、定期的なモニタリングを実施する。
たとえば、成果報告書の提出を求めたり、利用者からアンケートを取ったりして、サービスの質が低下していないか評価する仕組みを作る。
評価の結果を分析し、必要に応じて指導や助言を行い、事業をより良いものにする役割が特別区職員には求められよう。
第二に、業務の見直しを行い、プロセスの改善や不要な業務の削減を図るべきである。
まず、業務見直しの機会を定期的に設け、より効率的に処理できる作業は改善を行うことが重要だ。
改善に際しては、職場の同僚や上司など他者を交えると、新たな気付きが得られるだろう。
さらに、必要性の乏しい業務は思い切って削減を検討したい。
たとえば、ほとんど活用されていない資料や報告書は作成しない、または簡素化できないか検討する必要がある。
同様に、区民や事業者が申請・届出する書類についても、不要な場合は削減を進める。
これにより、職員が書類の確認に掛かっていた時間を節約できよう。
ただし、こうした取り組みは職員ひとりの自己判断で行わず、職場の上司や同僚に相談しながら進め、後に問題が生じないよう留意する必要がある。
⑤まとめ
以上の取り組みを通じて、限られた人材や財源を真に重要な行政サービスに集中することができ、自立性の高い効率的な事務運営が図られると考えられる。
【特別区】論文模範解答例:2022年過去問②「地域コミュニティの活性化」
【特別区】論文課題
特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。
また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。
こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。
このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
地域コミュニティとは、日常生活のふれ合いや共同の活動、共通の体験を通して連帯感や信頼関係が築かれている地域社会、すなわち「近所同士のつながり」である。
近年、地元への帰属意識の低下や個人主義の進展により、地域コミュニティは希薄化しつつある。
②重大性
地域コミュニティの希薄化はどのような影響をもたらすか。
一つに、社会的に孤立する人が増加することだ。
様々な問題や悩みを一人で抱えることで、児童虐待や自殺につながるおそれがある。
加えて、住民同士のコミュニケーション不足により、地域の防犯・防災機能の低下が懸念される。
したがって、地域コミュニティの活性化に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、フォーマルな地域コミュニティの代表である町会・自治会の活動が衰退しつつあることだ。
実際、町会・自治会の加入率は全国的に低下傾向にある上、参加者の高齢化や担い手不足が深刻である。
第二に、近所の住民同士が顔見知りになって交流する機会が減少していることだ。
それに伴い、ママ友や高齢者のお茶飲みグループなど、インフォーマルな地域コミュニティを形成するきっかけが喪失している。
④解決策
それでは、行政はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、町会・自治会に対する現役世代の関心を高めるとともに、現役世代が活動に参加しやすい環境づくりを支援するべきである。
まず、町会・自治会の活動内容の写真や参加者の声を紹介する広報誌を作成し、ホームページやSNSで広く発信する。
このとき、町会・自治会は防犯・防災、環境美化など住民生活と密接に結び付いた活動を担っていることを積極的に周知し、現役世代の関心を高めることが重要だ。
一方、現役世代は仕事や家事で忙しく、活動に参加したくてもできない事情がある。
そこで、現役世代が気軽に参加できる仕組みづくりを支援する必要がある。
たとえば、防犯パトロールやごみ拾いなどの活動単位で参加者を募集する取り組みを町会・自治会に提案したい。
一度活動に参加してみることで地域課題に興味を持ち、その後も継続して関わろうとする住民が増えると期待される。
第二に、地域住民が気軽に交流できる場づくりを行うべきである。
まず、既存のコミュニティを支援することから始めるのがよい。
地域には子育てする母親の集まるサークルや、祭りなどの住民交流イベントを実施する団体が存在する。
そこで、これらのコミュニティが積極的に活動し、地域住民同士の交流が促進されるよう支援することが重要だ。
たとえば、活動場所を提供したり、コミュニティの活動内容を広報誌でPRすると、参加者が増えてコミュニティの輪が広がっていくだろう。
次に、新たなコミュニティの創出に取り組みたい。
既存のコミュニティだけでは、身体の不自由な高齢者や障害のある子どもなどが十分に内包されない可能性がある。
したがって、NPOや社会福祉法人と連携し、認知症カフェを備えた地域の多世代交流拠点や、障害を持つ子どもの放課後の居場所を整備し、社会的弱者が地域コミュニティから疎外されないよう留意しなければならない。
⑤まとめ
地域コミュニティの活性化は、一朝一夕に成し得ない。
私は特別区職員となり、地域に対する現役世代の関心を高めること、住民が活きいきと交流できる場を整えることに粘り強く励みたい。
【特別区】論文模範解答例:2021年過去問①「魅力的な公共施設のあり方」
【特別区】論文課題
東京都では昨年、転出者数が転入者数を上回る月が続きました。
転出超過等によって人口が減少すると、税収の減少や地域コミュニティの衰退など様々な問題をもたらします。
また一方で、特別区の抱える公共施設の多くが老朽化しており、人口減少がもたらす更なる社会変化に対応した、施設の企画・管理・利活用が求められています。
このような状況を踏まえ、区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
魅力的な公共施設のあり方とは、社会情勢に則した施設の企画・整備を図るとともに、財政状況に適した施設の維持・更新を図る取り組みである。
②重大性
なぜ、公共施設のあり方が問われているのか。
一つに、住民福祉に与える影響が大きいことが挙げられる。
どんな施設を整備するか、反対にどの施設を廃止するかは区民の生活に直結する。
加えて、財政に与える影響も大きい。
新たな施設整備はコストが掛かるうえ、数十年にわたって維持費用が重くのしかかる。
したがって、魅力的な公共施設のあり方を実現するため、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、少子高齢化が深刻化していることだ。
それゆえ、多くの施設は利用率が低下する一方、高齢者福祉施設の需要が急増すると見込まれる。
第二に、施設の更新に伴う改築経費が財政を圧迫することだ。
実際、特別区全体の改築経費は2022年から2041年までに6.7兆円に上ると試算されている。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、社会情勢の変化を捉え、より需要の高い施設を重点的に整備するべきである。
とりわけ、特別養護老人ホームやケアホームなど高齢者福祉施設の整備が急がれる。
介護施設が不足すると、待機老人や介護離職の問題を引き起こすからだ。
民間による整備が進まない要因は、特別区内の地価の高さと土地の狭さにある。
そこで、特別区行政は学校の統廃合や不要施設の廃止に伴い生じる区有地を活用し、介護施設の積極的な整備を主導することが重要である。
一方、都市生活の潤いを向上するため、公園や緑地など自然環境の整備に取り組みたい。
介護施設を除けば、既存施設の整備水準は決して低くない。
これからの人口減少局面において必要とされるのは、建築物よりむしろ、区民が憩える十分な広さを持った豊かな水辺や都市公園であろう。
特別区職員は、長期的な視点に立ち住民福祉に資する公共施設の企画・整備に努める姿勢が求められる。
第二に、財政状況に鑑み、既存施設の統廃合を推進するべきである。
少子高齢化の進展により医療・介護関係経費の急増が見込まれるなか、全ての施設を今後も更新し続けることは困難だ。
そこで、施設の重要性を精査し、優先度の低い施設は積極的に統廃合を進める必要がある。
まず、将来の財政状況をシミュレーションすることが有用だ。
このとき、施設の改築経費に加えて、可能な限り全ての歳入・歳出項目を合わせて推計を行う。
推定結果を用いれば、更新する施設・統廃合する施設を検討することが可能になる。
次に、施設の統廃合について住民との合意形成を図らねばならない。
どんな施設が真に必要か、もっとも理解しているのは区民であるからだ。
住民と丁寧な対話を重ね、財政シミュレーションの結果を分かりやすく示しながら、持続性ある施設の在り方を探る必要がある。
⑤まとめ
社会情勢や財政状況の変化はネガティブな面が多い。
しかし、これを好機と捉え、より魅力的な公共施設の整備や利活用に取り組む役割が特別区職員には求められる。
私は特別区職員となり、住民ニーズに寄り添った公共施設のあり方に貢献したい。
【特別区】論文模範解答例:2021年過去問②「資源循環型社会」
【特別区】論文課題
国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。
特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。
このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
持続可能な生産消費形態の確保とは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会システムから脱却し、ごみの縮減や資源リサイクルの推進を図ることで、環境への負荷をできる限り減らしながら、持続的な経済活動を営む資源循環型社会の実現を目指す取り組みである。
②重大性
取り組みが求められる背景は何か。
一つに、過剰な天然資源の搾取によって、その枯渇が危惧されているからだ。
加えて、大量の廃棄物による環境破壊が深刻化していることが挙げられる。
特別区は経済活動が集積しており、資源循環型社会の実現に対する責務は大きい。
したがって、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
それは、資源循環型社会の実現は長期にわたるため、区民や事業者が継続してごみの縮減や資源リサイクルに取り組まなければならないことだ。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、区民がやりがいを持って活動できる環境を整えるべきである。
資源循環型社会に向けた取り組みは個人が成果を感じるのが難しく、長続きしにくいことが区民の参画を阻害している。
それゆえ、ごみの縮減や資源リサイクルの重要性を周知するだけでは、実際の行動に結び付かない場合が多いだろう。
したがって、区民の自発的で継続的な活動を促進するよう、達成感が得られる仕掛けを工夫して施す必要がある。
たとえば、町会や集合住宅のグループによる古紙の集団回収を活用する。
集団回収の拠点に回収量をグラフで示し、昨年の実績や他グループの状況と比較できるようにすれば、一層積極的な回収を促すことができよう。
加えて、回収量の多いグループの取り組みを区報やホームページで紹介するほか、そのグループの区民に対しては、食品ロスを削減するために食材の使い切りや過度な鮮度志向を抑制すること、コンポストを利用して生ごみの削減を習慣化することなど、より実践的な取り組みを順次周知すると効果的であろう。
第二に、事業者に対して参画するインセンティブを提供するべきである。
現状として、資源循環型社会の取り組みはコストが掛かると認識している事業者は少なくない。
しかし本来、事業活動において廃棄物の発生を抑制することは、事業者にとってコストの削減と利益の増加を意味するはずだ。
そこで、ごみの縮減や適性処理によってコストを削減した事例を事業者から広く集め、優良事例を顕彰するとともに、手軽に取り組めて効果の高い先進事例をまとめ、他の事業者に普及促進を図ることが重要である。
加えて、新たなビジネスの創出に取り組みたい。
資源循環型社会に資するビジネスモデルの提案を呼び掛け、実効性が高いと判断される場合は、行政が企業と連携して新事業の後押しを行うのである。
たとえば、子育てが一段落した世帯から状態の良いベビーカーやチャイルドシートを無償で譲り受け、それをクリーニングしたうえで、出産を控える世帯に低額で貸し出す事業が考えられる。
これにより、クリーニング企業や子育て支援NPOなどの参画が図られるとともに、まだ使えるものを地域社会で共有し大切にする気持ちを区民に啓発することができよう。
⑤まとめ
将来にわたり持続可能な社会を築くためには、区民・事業者・行政の協働が不可欠である。
私は特別区職員となり、資源循環型社会の実現に貢献したい。
【特別区】論文模範解答例:2020年過去問①「先端技術の活用」
【特別区】論文課題
近年、これまで人間が行っていた定型業務の自動化や、AI(人工知能)によるビッグデータの分析等、先端技術を活用した業務効率化の取組が急速に進んでいます。
一方、これらの取組を推進する上では、コストや情報セキュリティ、人材面等における課題もあるとされており、自治体職員は、こうした変化に対応していかなければなりません。
このような状況を踏まえ、先端技術を活用した区民サービスの向上について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
現在、特別区においてAIやRPAなどの先端技術を活用した業務効率化の取り組みが進んでいる。
たとえば、保育所の入所振り分けは手作業では膨大な時間を要するが、AIを活用すれば瞬時に決定することが可能だ。
今後も先端技術を導入する余地は大きい。
②重大性
なぜ、先端技術の活用が進められているのか。
少子高齢化の進展や地域コミュニティの衰退に伴い行政ニーズが多様化・高度化する一方、長期的な財政健全化の取り組みの中で特別区の職員数は減少傾向にある。
したがって、定型的な業務はAIやRPAを用いて最大限効率化し、生じた余剰資源を政策立案や判断を伴う業務、住民サービスの改善などに集中しなければならない。
先端技術の活用に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、多大なコストが生じることだ。
AIやRPAなどのシステムの導入は初期費用や保守費用が大きく、長期的にメリットがあると分かりつつも、予算を捻出するのは容易ではない。
第二に、情報セキュリティの確保が不可欠なことだ。
外部からの悪意を持ったハッキングや個人情報の漏洩を防がなければならない。
第三に、専門的な知識や技術を持つ人材の育成が求められることだ。
たとえば、AIやRPAの導入に伴う業務の棚卸、導入の委託先業者や適性コストの検討、さらにはAIやRPAが処理した結果の最終判断、住民への説明責任など、職員が果たすべき役割は大きい。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、複数の特別区で連携し、スケールメリットを活かしてコスト削減を図るべきである。
特別区は基礎自治体として、同種または類似の業務を行っている。
したがって、複数の区でシステムの共同運用を進められる可能性がある。
契約を一本化することでボリュームディスカウントが働き、各区の負担額は軽減できるだろう。
加えて、保守運用作業を担当する職員を削減することもできよう。
ただし、共同運用を進める上では、実務を担う株式会社などの実行組織を立ち上げる必要がある。
組織の立ち上げに向けて各区が集まり、様々な課題を検討しながら丁寧に対話することが重要だ。
第二に、システム導入時にセキュアな環境を構築するとともに、継続してセキュリティの確保を図るべきである。
民間企業や研究機関の中には、自治体に対してAIやRPAの導入支援実績を多数持つ場合がある。
こうした存在と連携し、強固なセキュリティ環境を備えたシステムを導入することが肝要だ。
また、情報システムの専門部署はその後も個人情報保護法の改正などの動向を見逃さず、支援企業と密に連携しながらセキュリティの維持に努める必要がある。
個人情報の漏洩に対する区民の不安は大きい。
特別区職員は上記の取り組みを区民に周知し、不安の払拭に努めなければならない。
第三に、職員の情報リテラシーの向上を図るべきである。
先端技術の活用は全庁的な取り組みとなる。
したがって、全ての職員がシステムを適切に扱えるよう、一定程度のスキルの修得が求められる。
具体的には、AIやRPAの活用に関するガイドラインを策定した上で、職員向けに研修を実施し、活用方法や業務効率化などのメリットを教授することが有用である。
また、近隣自治体や産学官連携による交流の機会を設ければ、職員のモチベーション向上が期待されるだろう。
一方、情報技術に不慣れな職員が取り残されないよう、情報システムの専門部署によるサポート体制を整えることを忘れてはならない。
⑤まとめ
先端技術の活用は重要性が高いが、課題が多く存在する。
特別区職員はシステム面や人材面の整備を図り、住民サービスの向上を実現しなければならない。
【特別区】論文模範解答例:2020年過去問②「地域防災力」
【特別区】論文課題
近年、気候変動の影響等により大規模な水害が発生しています。
また、今後高い確率で発生することが予想される首都直下地震は、東京に甚大な被害をもたらすことが想定されています。
そのため、特別区は、地域の課題を的確に把握した上で、区民等と協力しながら、災害に強い安全で安心なまちづくりの取組を積極的に推進していかなければなりません。
このような状況を踏まえ、都市における地域の防災力強化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
地域防災力とは、災害から自分自身や家族の身を守る自助、地域の住民同士で助け合う共助により災害を未然に防ぐとともに、災害発生時には被害を最小限に留める取り組みである。
②重大性
地域防災力の重要性は、これまでの大規模災害で明らかになっている。
糸魚川市の大火では、約150棟の家屋が焼失したにも関わらず、住民同士が声を掛け合い避難したことで死者の発生を免れた。
特別区では、今後高い確率で首都直下地震の発生が懸念されている。
したがって、地域防災力の向上に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、住民の防災意識の低下が懸念されることだ。
東京消防庁の調査によると、家具の転倒防止対策を実施していない理由として、「面倒である」を挙げる住民がもっとも多い。
第二に、地域コミュニティが衰退しつつあることだ。
少子高齢化や核家族化の進展に伴い、地域による助け合いが希薄化している。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、区民の防災意識を向上し、自助の一層の促進を図るべきである。
個人で行える防災の取り組みとして、家具の転倒防止対策・感震ブレーカーや消火器の設置・ハザードマップの確認など、有用なものは数多い。
しかし、日々の忙しさや家具にキズを付けたくないという理由で、対策が普及しづらいことも事実だ。
そこで、特別区職員は、より手軽に行える防災対策の周知に努める必要がある。
たとえば、家具をネジで強力に固定しなくとも、ポールやマットの器具を用いた安全かつ手軽な方法があることを区民に広く発信する。
情報発信においては工夫を施したい。
ホームページや広報誌のみならずSNSなど多様な手法で発信するほか、子ども連れで気軽に参加しやすい防災イベントの開催などの取り組みを積極的に行うことが重要である。
第二に、地域の防災活動を支援し、共助の一層の促進を図るべきである。
行政がリーダーシップを発揮し、薄れつつある地域による助け合いを再び強固なものにする必要がある。
具体的には、自治会や消防団と連携し、街歩きをしながら危険箇所を把握するとともに、情報を書き込んで防災マップを作成する取り組みを行う。
これにより、地域住民の連帯が強まるとともに、行政は地域の実態に応じた対策を検討することができる。
加えて、地域住民が一体となった防災訓練を繰り返し行うことが重要だ。
このとき、一人暮らしの高齢者や身体の不自由な住民については、救出する人を事前に決めて実際に救助を行うなど、地域の実情を踏まえたきめ細かな訓練をコーディネートする役割が特別区職員には求められる。
⑤まとめ
災害時に区民の生命と財産を守ることは、行政の責務である。
しかし、激甚化・頻発化する災害に対して、区民の安全を確実に守るためには自助と共助の力が欠かせない。
私は特別区職員となり、平素から地域に密着した活動により地域防災力の向上に貢献したい。
【特別区】論文模範解答例:2019年過去問①「外国人の増加」
【特別区】論文課題
特別区では、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、多くの来日が予想される外国人観光客への対応を進めているところです。
さらに、国内労働者人口の減少を背景とし、外国人労働者も増え続けています。それらに伴う多様な言語を話す外国人の増加は、地域社会に様々な課題を投げかけることが予想されます。
このような状況を踏まえ、これら外国人の増加に伴い生じる新たな課題に対して、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
我が国の外国人観光客数は2018年に3000万人を超え、過去最多を記録した。また、国内労働者の減少を背景に外国人労働者は増加し続けている。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催地であり、多くの企業が集積する特別区において、外国人観光客に加えて外国人労働者は今後一層増えると見込まれる。
②重大性
外国人の増加はどのような意義を持つか。
一つに、特別区において少子高齢化により生産年齢人口の減少が見込まれる中、労働力や地域活動の担い手として外国人住民の存在が高まることが挙げられる。
また、外国人観光客による旺盛な消費活動は、国内の経済活性化に必要不可欠である。
したがって、外国人の増加に対応するため、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、多様な言語を話す外国人が増加していることだ。
近年はベトナムやフィルピンからの在留者が多く、言葉が分からず生活に支障をきたす場合がある。
また、外国人観光客は団体旅行から個人旅行にシフトしており、宿泊施設や商店で観光客が自ら地域住民とコミュニケーションをとる必要性が増している。
第二に、外国人住民と地域社会の接点が少ないことだ。
外国人住民が地域社会の担い手として活躍するためには、日本人住民との相互理解が欠かせない。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、多様な国籍の外国人に対して、円滑なコミュニケーションを支援するべきである。
まず、行政サービスの多言語対応を強化することはもちろん、「やさしい日本語」による情報提供を心掛けることが重要だ。
外国人が目にする通知文書やチラシなどは、簡単な文章を用いたり、ふりがなを振ったりして、普通の日本語よりも分かりやすい「やさしい日本語」になるよう表現方法を工夫する。
「やさしい日本語」は行政サービスのみならず、病院など生活の場や災害発生時においても有用であるため、関係機関と連携し普及に努める必要がある。
加えて、誰もが視覚的に理解しやすいピクトグラムを用いた看板や案内標識を区の施設で積極的に活用するほか、宿泊施設や商店に利用を促すと有効である。
こうした取り組みにより、訪日外国人が安心して生活や観光ができる環境を整えたい。
第二に、異文化交流の機会を促進し、外国人住民と日本人住民との相互理解の醸成を図るべきである。
具体的には、スポーツイベントや様々な国の伝統料理をふるまうフェエスティバルなどのイベントを開催し、多くの住民が気軽に参加できるよう工夫することが重要だ。
はじめは行政が主催しながらも、やがては地域住民が主催するよう引き継ぐことができれば、外国人住民の地域参加の第一歩となるだろう。
さらに、交流の機会はイベントに留まらない。
たとえば、防災訓練の活用が挙げられる。
地域の避難訓練に外国人住民が参加することで、言語面や習慣面での課題を相互に理解するとともに、外国人住民の防災意識が高まると期待される。
こうした取り組みにより、外国人住民の地域参加を促し地域社会の一員として活躍できるよう支援したい。
⑤まとめ
増加する外国人に対して、単なる短期的な労働力や消費活動の主体として見なすことがあってはならない。
むしろ、外国人が生活しやすく観光を楽しめる環境を整えようとする姿勢を持つことが重要だ。
私は特別区職員となり、訪日外国人が「日本に来てよかった」と感じてもらえるよう邁進したい。
【特別区】論文模範解答例:2019年過去問②「認知症高齢者」
【特別区】論文課題
我が国では、今後のさらなる高齢化の進展に伴い、認知症高齢者の大幅な増加が見込まれています。
こうした中、特別区では認知症高齢者の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けることができる地域社会を実現するための様々な取組を推進しています。
このような状況を踏まえ、今後急増することが見込まれる認知症高齢者への対応について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
認知症は不可逆的で完治しない病とされ、身体的に健康な場合は徘徊する傾向がある一方、適切な医療・介護サービスによって在宅で生活を送ることが可能な場合がある。
特別区では今後、後期高齢者の増加に伴い認知症高齢者が急増すると見込まれる。
②重大性
認知症高齢者のケアを施設で行う場合、医療介護関係経費を大きく圧迫することにつながる。
一方、できる限り住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができれば、経費を削減できるほか、認知症高齢者自身の生活の質が向上する。
したがって、認知症高齢者が地域社会で安心して生活できる環境を整えるため、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題は何か。
第一に、医療サービスと介護サービスの連携が求められることだ。
各サービスの横断的利用や移行のタイミングで適切な連携がなされなければ、地域で暮らすために必要なサービスが途切れてしまう懸念がある。
第二に、地域社会の見守りが求められることだ。
認知症高齢者が地域で生活することに対する理解や、徘徊に気付き対処することなど住民の協力が欠かせない。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、医療サービスと介護サービスの連携を促進するべきである。
認知症高齢者を地域社会でケアするとき、医療・介護サービスは一体的な提供が求められる。
それゆえ、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・理学療法士などの幅広い専門職種の連携を強化することが重要だ。
まず、専門職が集まる地域ケア会議や合同研修の開催を通して、お互いの特性や限界を理解し、チーム一丸となって認知症高齢者のケアに取り組む関係をつくることから始めるとよいだろう。
次に、各専門職が認知症高齢者の情報を適切に共有するため、ICTを活用した利便性の高い連携環境の整備を進める。
特別区職員は、医療機関と介護機関の媒介役となり、各主体が円滑に連携できるよう支援する必要がある。
第二に、地域社会の見守り体制を整えるべきである。
身体的に健康な認知症高齢者は徘徊する傾向があり、自動車や自転車にひかれて死傷する恐れがある。
認知症高齢者の安全を確保するためには、早期発見が必要である。
したがって、地域社会で認知症高齢者を見守るシステムを整備することが重要だ。
具体的にはまず、見守り希望の登録をした高齢者にシールを配布し、シールを持ち物に貼り付ける。
そして当該高齢者が徘徊した場合、発見した住民が警察に通報し、保護した警察がコールセンターから身元情報を受けて家族に迎えの連絡をするのである。
こうしたシステムを整えると同時に、区民に対して周知を図ることが欠かせない。
研修会や出前講座を開催して多世代の参加を促し、徘徊への対処方法に加え、認知症高齢者の特徴や接する上での注意点などについて理解を促すと有効であろう。
⑤まとめ
認知症は高齢者にとって珍しくない病気であるとともに、適切なケアが施されれば日常生活を送ることが可能である。
私は特別区職員となり、高齢者が認知症になっても住み慣れた地域で暮らせる環境の整備に貢献したい。
【特別区】論文模範解答例:2018年過去問①「住民との信頼関係」
【特別区】論文課題
特別区では、安全・安心のまちづくりや環境負荷の軽減をはじめ、区政の様々な分野で住民と協働した取組みが展開されています。
今後、人口減少や少子高齢化の進展など社会状況の変化により、地域の抱える課題がますます複雑・多様化する中にあっては、行政と住民が連携を深め、課題解決に取り組むことが更に重要となってきます。
その基礎となるのが住民との信頼関係です。
このような状況を踏まえ、住民との信頼関係の構築について、区政の第一線で住民と接する特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
住民との信頼関係とは、区政に関する情報を区民に届ける広報と、区民の意見を受けとめる広聴を活用し、円滑なコミュニケーションにより育まれる行政と区民の相互理解である。
②重大性
なぜ、住民との信頼関係の構築が求められているのか。
一つに、官民協働に必要不可欠であることが挙げられる。
今後、一層重要性を増す住民と協働した取り組みを推進する上で、信頼関係は多くの住民が参加するための土台となる。
したがって、信頼関係の構築に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、行政からの情報発信は難解になりがちなことだ。
専門用語や常用ではない表現が多用されていれば、情報の受け手は関心を失うだろう。
第二に、行政への意見表明は成果を感じづらいことだ。
自分の意見がどのように反映されたか分からなければ、意見を表明する意欲は低下する。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、分かりやすく丁寧な広報に努めるべきである。
具体的には、専門用語や常用ではない表現を用いるのではなく、行政に詳しくない人でも理解しやすい言葉で表現することが重要である。
また、税金の納期に関するお知らせやイベントの告知など、毎年同様の情報発信を行っている場合、安易に例年通りの文章をコピーすることは控えたい。
一層伝わりやすい文章を意識し、デザインや言い回しを改善する細やかな気配りが求められよう。
さらに、職員の写真を広報誌に掲載しセリフ調で情報を紹介したり、イラストの得意な職員が描いたキャラクターを区のSNSに登場させたりすると、より関心を持って区政に親しんでもらえるはずだ。
将来大人の住民となる中学生や高校生が見ても分かりやすく興味を引く広報であれば、区政に意識の高い中学生や高校生からも信頼が得られ、将来的に官民協働の取り組みに前向きに参加してもらえることが期待される。
第二に、迅速かつ応答性の高い広聴に努めるべきである。
現状として、審議を通して大方の方針が決まっている施策の場合、パブリックコメントで意見を募っても反映が見られない可能性がある。
こうした状況では、区民は意見表明に意義を感じないだろう。
したがって、政策立案の初期段階からタウンミーティングの開催やアンケート調査を行い、区民の意見を積極的に収集することが重要である。
タウンミーティングは、多忙な現役世代でも参加できるよう夜間や休日に開催したり、インターネットで参加できる仕組みを整えるなどの工夫を行いたい。
加えて、得られた区民の声がどのように新しい施策や決まり事に反映されたのか、ホームページや広報誌で分かりやすく周知すると、継続して意見を述べる意欲が高まるはずだ。
多くの住民が、自分の声が行政に反映されていることを実感できれば、信頼関係の構築につながると考えられる。
⑤まとめ
窓口での丁寧な対応や笑顔での接客はもちろん大切だが、さらに一歩踏み込み、
上記の通り住民との円滑なコミュニケーションを図る取り組みを行うことが、信頼関係の構築には欠かせない。
【特別区】論文模範解答例:2018年過去問②「子どもの貧困」
【特別区】論文課題
日本の将来を担う子どもたちは国の一番の宝であり、子どもたちが自分の可能性を信じて前向きに挑戦することにより、未来を切り拓いていけるようにすることが何よりも重要です。
しかし、現実には、貧困が世代を超えて連鎖し、子どもたちの将来がその生まれ育った家庭の事情や環境などによって左右されてしまうことも少なくありません。
このような状況を踏まえ、社会における子どもの貧困問題について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
【特別区】論文模範解答例
①定義
子どもの貧困とは、栄養のある食事や学習の機会が十分に提供されないなど、我が国の経済や生活の水準と比べて貧しい状態に子どもが置かれていることである。
国の調査によると、約7人に1人の子どもが貧困にある。
②重大性
子どもの貧困の重大性はなにか。
それは、子どもの健全な発達や人格の形成に大きな影響を与えることだ。
加えて、子ども時代の教育格差が将来の所得格差を生み、社会全体の経済的損失につながる。
したがって、子どもの貧困の防止に向けて、特別区職員は一層の取り組みを行う必要がある。
③課題
取り組みを行うにあたり、課題はなにか。
第一に、貧困の原因の大半が親の経済的困窮によることだ。
収入が少ないため生活が不安定になり、多くの家庭では当たり前の生活環境や教育の機会が得られなくなる。
第二に、貧困が親から子へ連鎖し、抜け出せなくなるおそれがあることだ。
十分な教育を受けられなかった子どもは、進学を諦めたり就職のチャンスが乏しくなったりすることで、大人になっても収入の確保が困難になりやすい。
④解決策
それでは、特別区職員はどのような取り組みを行う必要があるか。
第一に、親に対して生活支援・就労支援を行い、生活の安定を図るべきである。
まず、無職や一人親など著しく困窮している世帯の場合、当面のあいだ生活保護の受給が不可欠だ。
また、住居を喪失していれば低額宿泊所を仮住まいとして提供し、賃貸アパートを借りて転居するまで支援が必要である。
こうして生活を整えた上で、「普通の暮らし」に戻るため就労支援を行う。
ただし、支援対象者は過去に何度も解雇されたり就職に失敗したりして、自信を失っている可能性がある。
したがって、履歴書の書き方や面接の受け方を丁寧にサポートすることが重要である。
さらに問題は、働くことが貧困の解決にならない場合があることだ。
たとえば、母子家庭の就業率は高いにも関わらず、大半が非正規雇用であるため収入が低く生活が困難である。
そこで、人材不足の深刻化が見込まれる介護施設の事業者と連携し、支援対象者が介護関連の資格を取得し正規職員として働けるよう環境を整えたい。
第二に、子どもに対して教育支援やその他必要なケアを行い、貧困の連鎖を断ち切るべきである。
貧困家庭にいる子どもは、集中して学習する場所や時間がなく、親から勉強を教わることも望めないため、学校の授業に付いていけなくなり学力が低下しやすい。
そこで、地域における放課後の学習支援に取り組むことが重要だ。
退職教員や大学生をボランティアとして募り、学校の空き教室や高齢者の養護施設を使って学習教室を開催し、学習の習慣化を図る。
一方、貧困を断ち切るために必要な支援は教育に留まらない。
親の経済的困窮を中心にして、複合的な困難が生じるからだ。
たとえば、様々な体験の不足・自己肯定感の低下・慢性的なストレスなどである。
しかし、この状況に行政だけで十分対処するのは難しい。
したがって、当事者に近くきめ細かな支援を得意とするNPOと協働することが重要だ。
つまり、支援対象者が集まりやすいNPOを相談窓口とし、問題を整理した上で、しかるべき行政支援につなげるのである。
⑤まとめ
格差社会と呼ばれる現代において、貧困を根絶するのは困難だ。
しかし、生まれ育った環境によって、子どもの将来が閉ざされてしまうことがあってはならない。
私は特別区職員となり、全ての子どもが夢と希望を持てる社会の実現に貢献したい。